「夜のせんせい」がTBSチャンネル2で明日一挙放送です「インビジブル」初回は母の死の翌日でした‥

2022年05月03日

「雪国」を観て‥



人々の発する言葉が、厚く降り積もる雪の中へと吸い込まれ
人の想いも、はっきりとした輪郭を見せることなく
雪あかりの中で漂っているように感じます。

しかし雪が齎す光と影の世界は
時として、人の想いにも言葉にも
妖しいエネルギーを与えるようです。

そんなふうに感じました‥


東京の下街で育ち、無為徒食の島村は
自身の真面目さを取り戻すために始めたのが山歩きでした。

あくせく働かずとも、東京で営む妻子との生活は
親の残した財産で豊かに送る事ができました。

ですから彼にとって山歩きは徒労のようではありますが
実は非現実的な魅力も感じていました。

彼は見たこともない西洋舞踊を自分なりに研究をし
あくまでも空想で踊る幻影を鑑賞しただけの紹介文を書く事で
世間から文筆家の端くれに数えられていました。
それが職業のない彼の気休めになっていたようです。

そんな島村が山歩きをした夜
辿り着いた温泉場で芸者を頼みますが
生憎手一杯らしく、代わりに連れて来られたのが
踊りと三味線の師匠の家に住み込む娘でした‥

娘は後に芸者にでるようになり芸名を駒子と名乗ります。
島村は駒子を取り巻く葉子という女と、駒子の師匠の息子との
人間模様にも強い関心を寄せます。
特に葉子には列車の中で見かけて以来惹かれていました。

たまたま辿り着いた雪国の温泉場での出来事は
島村にとって興味深く、妖しく‥
そしてミステリアスだったと想います。

島村は3回の逗留で、お座敷の合間に
部屋に立ち寄る駒子を待つのが癖になっていたのです。

自身の奥にある淋しさと、駒子が根底に持つ虚ろな部分とが
お互いを求めあってしまったのでしょう‥

しかし、駒子は自身を島村へ押し付けるだけで
島村の中へは入り込む事はなかったのです。

そして‥逗留中の夜‥
それこそ地球が宇宙に浮かぶ星である事を思い知るような
艶かしささえ感じる天の河の底なしの深さを
繭倉が燃え盛る炎の渦との連動により
島村はより強く体感するのです。

燃える繭倉の2階から落ちた女が葉子とわかった途端
島村はリアルからますます遠ざかります。

雪の世界で起きる出来事は島村が傾倒する西洋舞踊と同じように
まるで幻影を鑑賞しているような感覚だったのではないでしょうか。

しかし相手は生身の人間ですし現実の中で意志を持ち存在しています。

島村は駒子の中の空洞をどこかで感じており
一方通行のような虚しさをも感じたのかもしれません。

帰りのトンネルを抜ける時
島村は何を想ったのでしょう‥


島村は、とことん旅人であり、観察者であり
どこか遠い眼を駒子と取り巻く人々へ向けるのですが
次第に探るようになり、敬意さえ感じながらも
繭倉の火事で見た、葉子との淵の瀬戸際で喘ぐ駒子をみると
ますます自分の範囲の駒子では無いことを察したのでしょうね。


一生さんの島村はここに書くまでもありませんが
今回も素敵でしたし
台詞の抑揚も発声も新鮮でした。
そして殊の外指の動きのエロさが際立つ作品でした‥‥







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wxy812 at 21:55│Comments(0)ドラマ | 思うこと

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